ファッション・レボリューション・デーを始めたキャリー・ソマーズは語る
「Change is possible ~私たちは変化の担い手になれる~」

ファッション・レボリューション・デーを始めたキャリー・ソマーズは語る<br />「Change is possible ~私たちは変化の担い手になれる~」


※ この記事はピープルツリーの創設者であるサフィア・ミニーの書籍『Slow Fashion』(2016年3月発行:英語版のみ)からの抜粋です。

 

ファッション・レボリューション・デーの創始者であり、英国の帽子ブランド「パチャクティ(Pachacuti)」の創設者であるソマーズは知っている。消費者には力があり、それをどう使うか学びさえすればよいのだと。

 

―― ファッション・レボリューション・デーとは?

2013年にバングラデシュで起きたラナ・プラザの悲劇を二度と繰り返さないために始めました。世界的な運動に発展し、80か国以上の国々で(※インタビュー当時。2016年度には90か国)、デザイナー、エシカルブランド、ショップ、生産者、研究者、関連団体が連携して、ファッションの生産背景の制度改革を求めました。質問を投げかけたり、基準を掲げたり、業界全体でよりよい取り組みの見本を示したりするのに、誰もが利用できる機会をつくったのです。それぞれの組織が変革をもたらすために長年かけて行ってきたことはたくさんありますが、ファッション・レボリューションは、原料から製造、商品ができあがる全体を通して、最善の取り組みを推進する場なのです。最上流のコットン農家から、廃棄物を減らそうとクリエイティブな方法で取り組むデザイナーまで、すべての人びとが関わっています。

ファッション・レボリューションは、毎年異なるキャンペーンでファッション業界の最も差し迫った問題に取り組んでいます。最も弱い立場の人びとに光を当てて、改善するよう業界に訴えるのです。また、 ファッションの未来をより良くしようとすでに取り組んでいる人びとの事例を紹介することで、「変化は可能である」と実証して見せたりもします。

―― 目標としているのは?

私たちは、自分の買うものに本当はどれだけの代償が支払われているのかを知りません。ファッション業界は、原料から製品ができるまでの各工程がバラバラに分かれていて、生産者の顔が見えません。そのために人の命が犠牲になっています。世界中で人びとが苦しみ、環境が危機的状態にあるのは、私たちのファッションが直接もたらした結果なのです。

ファッション・レボリューションは、ファッションに関わるすべての関係者に、ひとつの質問に答えられるように求めています。それは「私の服をつくったのは誰?」という質問。とてもシンプルな問いかけですが、大きな意味を持ちます。2015年4月、偶然にもファッション・レボリューション・デーと同じ時期に発表された「ビハインド・ザ・バーコード(Behind the Barcode)」の新レポートによると、48%のブランドは自社の服の製造工場がどこにあるか確認しておらず、91%は原料の生産地が分からなかったそうです。

だからこそ、分業化されバラバラになったつながりを再構築する必要があります。なぜなら、透明性を高めることが、状況を改善するために欠かせないからです。2015年のファッション・レボリューション・デーでは、参加者は自分が着ている服のタグの写真を撮り、ブランド名とハッシュタグ「#WhoMadeMyClothes?( 私の服をつくったのは誰?)」をつけてソーシャルメディアで発信しました。こうすることにより、世界中の人びとが、ブランドと小売店に対して、答えられて当然な問いかけの形で、自分たちが販売する服をつくっている人びとを分かるようにしてほしいとプレッシャーをかけたのです。

―― この問題を引き起こしたのは消費者ではありません。それなのに、なぜ消費者が問題解決に責任を果たさなくてはならないのでしょうか? どうやってブランドに耳を傾けさせるのでしょうか?

確かに消費者は問題の直接的な原因ではありません。しかし、だからといって私たちが解決に関わる必要がないということにはなりません。ブランドも小売店も、生産過程の中にいる人びと(いわゆる下請け)の言葉には注意を払わないかもしれませんが、顧客の言うことには間違いなく注意を向けます。

業界内部の関係者から聞いた話では、「私の服をつくったのは誰?」と写真を撮ってブランドに連絡した人がひとりいると、ブランド側は1万人の声を代表しているのだと受け止めるそうです。私たちは、消費者として驚くべき力を持っているのです。

―― この運動は、何かを変えるきっかけとなりますか?

ラナ・プラザは、この業界に目覚ましい変化をもたらす大きなきっかけとなりました。ファッション業界が抱える問題のひとつが表面化した事件ですが、新たな目標を設定する機会を私たちにくれました。ラナ・プラザの倒壊によって、ファッション・レボリューションの新たな世代が生まれたのです。自分たちの服についてストーリーを知らされた彼らは、新たに問いを投げかけます。「誰がつくったの?」「どこで?」「賃金や労働条件は?」「衣料品工場の労働者の生活水準はどうだろう?」「衣料品製造が環境に与える影響は?」「改善は可能だろうか?」「もしそれが納得いかないものだったら、何ができるだろうか?」こういったシンプルな質問が、業界に透明性を高めるよう働きかける力になるのだと思います。ブランドや小売業者がこのような問いかけに答えるよう促されれば、自らのサプライチェーン(原料から商品ができるまでのすべての工程)をじっくり調べなければなりません。サプライチェーンの透明性が高まれば、人や環境が酷使されていることが明らかになり、結果として、搾取の横行が減っていくでしょう。とはいえ、透明性だけでは、業界全体を変えていくには十分でないことは分かっています。透明性は、ファッションに革命を起こすプロセスの始まりなのです。

―― ラナ・プラザの事故に衝撃を受けながらも、エシカルにつくられた服だけを買う余裕がない人たちはどうしたらいいのでしょうか?

私たちは、自分の好きな店をボイコットするよう勧めているわけではありません。ファッション業界を内側から変えていく必要があります。私たちの好きなブランドや小売店に対して、「私の服をつくったのは誰?」と問いかけることで、事業の透明性を高めるよう働きかけられるのです。

私たちは、ファッション業界を新しくつくり変えているのです。労働者の暮らしも、サプライヤー(製造業者)も、原料も。私たちが服を1枚買ったり捨てたりするごとに。服にまつわるストーリーを新たに見い出すたびに、ストーリーをネットでシェアするたびに、またブランドに「私の洋服をつくったのは誰?」と問い合わせるたびに、ファッション業界を改革することにつながるのです。私たちの考えること、言うこと、やることがファッションを変えます。私たちはみな、ファッション・レボリューションの担い手になれるのです。

―― ラナ・プラザの事故から、世界はどれだけ変わったでしょうか?

ラナ・プラザの悲劇がひとまず収まって以来、ファッション業界では多くの改善がなされてきました。もっとも、こうした変化を起こし始めるのに、これほどの規模の悲劇を要したのは不幸なことです。バングラデシュ・アコード(バングラデシュにおける火災予防及び建設物の安全に関する協定)は、バングラデシュの(願わくば業界全体の)労働条件の改善に向けた画期的な一歩となりました。描かれている新たなビジネスモデルは、トップダウンよりボトムアップのアプローチを基盤とし、関係者が参加してつくられたもので、同時に労働法の修正、研修の改善、火災予防と建設物基準の改良も加えられました。しかし、まだしなければならないことがたくさんあります。最低賃金はスラムで暮らす生活費の6割しかまかなえない水準です。ビハインド・ザ・バーコードの報告では、ファッションブランドの86%は、サプライチェーンの労働者に対して生活賃金を支払おうとしていません。

―― 私たちが消費の仕方を変えれば、どんなことができると思いますか?

消費することは、欲求を満たすことです。人間の基本的欲求のひとつに「帰属する欲求」があります。社会に属したいという欲求は、美しい服を買うだけで満たせるものではなく、私たちの服をつくる人びととのより広いコミュニティーと繋がりを構築することによって満たされると思います。

服づくりの裏にあるストーリーを知り、つくっている人たちの顔が見えることが、私たちのアイデンティティーや欲求を、ブランドやロゴで結ばれる関係よりも満たしてくれます。消費者の要求がファッションの産業としてのあり方を改革していくのです。みなが自分の消費の仕方について疑問をもち始めたら、私たちは、まったく違ったファッションのパラダイム(新しいものごとの考え方)を見られることでしょう。

―― 政府ができることは何でしょうか?

政策レベルでは、政府と政策立案者とともに恊働して、次のような取り組みをする予定でいます(※英国政府に対してということ)。

  • ファッションと繊維産業において人権と環境がないがしろにされている問題に対し、社会的対話やコラボレーション、現実的な目に見える活動を促す。私たちは、ファッション・レボリューションの活動が行われているすべての国で 、透明性と責任について政府が課題に取り上げることを望んでいる。
  • 人権と環境保護に関して、ガイダンス及び自主基準にとどまらず、正式なデュー・デリジェンス(企業の査定)の実施に向けて要求し始める。
  • サプライチェーン、及びファッション製品の原料調達、製造、消費、廃棄の方法について、情報が公開されるように訴える。

―― EUレベルではどうですか?

ファッション・レボリューションは、イギリス政府とEU、G7とともに関係者グループの一員となっています。私たちはさらに、市民がこれらの問題についての政策立案や法律制定にどのように影響を与えられるか、どうやって政策立案者からもっと協力を得られるかを検討しています。一般市民は、もっと情報とトレーサビリティ(追跡可能性)へのアクセスが必要です。ブランドや小売店は、もっと透明性を増し、自分たちの顧客にその情報を提供するべきです。EUの政策はこのことについて枠組みを示す必要があります。イギリスの「現代奴隷法2015(Modern Slavery Bill2015)」のような法律制定をEUがヨーロッパ全体で取り入れるよう、期待しています。現代奴隷法2015は、大企業の責任を求めています。これは、企業が自らのサプライチェーンに法的責任を果たすことを保証するもので、大きな前進です。EUレベルでも採用されるべきで、さらにEU内の企業に対して海外グループも含めサプライチェーン全体に関わる報告を求めるべきなのです。

EUの非財務情報開示指令案(EU Non-Financial Reporting Directive)をファッション・レボリューションは歓迎します。この指令案は、大企業に対し年次報告書で環境及び、社会、従業員、人権、汚職・贈賄の防止に関する政策、リスク、結果の情報開示を求めています。ファッション・レボリューションは、EUに対して、この情報が一般市民への情報提供と教育、そして信頼を高める形で公開されるように要請しています。EUはさらに、ひとつの製品の関係者を繋ぐ情報システムをつくって実施するべきです。それに似たシステムは、すでに食品のサプライチェーン(例えば食肉)には導入されており、服や繊維製品でも参考として利用できるかもしれません。

 

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キャリー・ソマーズ <Profile>

1992年、英国でフェアトレードの帽子ブランド、パチャクティを設立。ラナ・プラザ崩壊事故の後、同じく英国のフロム・サムウェアのデザイナーの、オーソラ・デ・カストロとともに、ファッション・レボリューションを立ち上げる。

 

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日本でも参加できるキャンペーンとして、お洋服を裏返してタグを見せ、SNSで発信する方法があります。#whomademyclothes @fashionrevolutionjapan とハッシュタグつけてを投稿してください。このタグで検索すると、世界中からの参加者の投稿をご覧いただけます。

ピープルツリーの直営店(自由が丘店、池袋東武店)では、4月30日(日)までファッション・レボリューション・ウィークとして、撮影スポットをつくりました。撮った画像をSNSに投稿していただくと、板チョコをプレゼントいたします。
期間:4月21日(土)~30日(金)