ご支援ありがとうございました!
~生産者支援プロジェクト実施報告~

ご支援ありがとうございました!<br>~生産者支援プロジェクト実施報告~


5月1日~6月5日まで行ったフェアトレード生産者の支援プロジェクトは、目標を大きく超えるご支援をいただき無事終了しました。

プロジェクトの概要を以下の通り報告いたします。

1.プロジェクト目的

新型コロナウイルスの感染拡大を受けてフェアトレード商品の生産の中止や延期を余儀なくされ、苦境に陥っているピープルツリーのパートナー団体に対し、休業中の賃金支払いや前払い、食糧配給などに必要な資金を送り、活動の継続を支援することを目指しました。

2.クラウドファンディング概要

1) 実施期間

・グローバル・ヴィレッジ/ピープルツリーによる直接募集: 2020年5月1日~5月8日
・クラウドファンディングサイト「READYFOR」による公募: 2020年5月9日~6月5日

2) 目標金額: 200万円

3) 達成金額: 308万4,800円
[内訳] ・直接募集: 93万4,800円
・READYFOR:215万円

5月8日までの直接募集により約80万円が集まったことから、READYFORの目標金額を120万円でスタートしました。

5月18日に120万円を達成することができたため、パートナー団体への支援金額の上乗せと支援先の追加を目指して「ネクストゴール」を200万円に設定し、募集を継続しました。最終的にREADYFOR経由でのご支援は215万円に達しました。

さらに、ピープルツリーのお取引先等からイベントの売上をご寄付いただくなど、直接支援も93万円あまりとなり、いただいたご支援の合計は308万4,800円となりました。

3.実施概要

1)パートナー団体へのヒアリングと支援先決定

ピープルツリーの商品供給には、衣料品や雑貨の各生産工程に関わる生産者グループや食品の原材料栽培の農家グループなど18カ国145グループが携わっており、最終製品の受発注窓口となっているパートナー団体は7カ国27団体あります。このうち、ウイルス感染拡大によるロックダウンなどによって生産活動が滞っていた衣料品や雑貨のパートナー団体に、ロックダウンによる影響やその対応のためにどのような活動を行っているか、活動に必要な金額、政府や他の取引先等からの支援の有無をヒアリングしました。

ロックダウン措置がとられた国や地域では、ほとんどのパートナー団体が、厳しい規制により生産活動が滞る中でもスタッフに賃金を支払い、製品の出来高払いをする職人に対しても前払いや支援金の給付によって生計を支援していました。また、特に困窮している生産者やコミュニティ内の貧しい人びとに対して、食糧や衛生用品の配布を行っている団体も多くありました。この回答を受け、20団体に対して支援金を送ることを決定しました。

また、グローバル・ヴィレッジが20年に渡って支援しているバングラデシュのNGWF(バングラデシュ衣料産業労働者連盟)より、収入減や失業に苦しむ縫製工場の労働者の支援を要請されたことから支援先に追加し、支援先を21団体としました。

NGWFは1984年に設立された同国最大の労働組合連合で、衣料品産業で働く人の労働組合への加入促進や、雇用主や政府に対する働きかけを通じて労働者の待遇改善を実現してきました。
今回のコロナ禍によって、大手の欧米企業が店舗の休業などによる売上減を見込み、生産工場への発注を次々にキャンセルしました。キャンセル額は32億ドル(約3,450億円)に及び、これによって縫製工場などで働く労働者420万人の半数以上にのぼる230万人が、収入減や失業などに苦しんでいます。解雇された人はNGWFに報告があるだけで1万3,000人、休業手当もなく賃金を8割カットされるなどのケースも相次ぎました。
NGWFは5月初めから生活に困窮している人に食糧を配布する活動を始めており、その費用の支援を求めていました。

このプロジェクトは当初、フェアトレードのパートナー団体のみの支援を想定していましたが、フェアトレードの傘で守られていない、さらに厳しい状況にある人びとにも支援を届けることとしました。

2) 支援金額の決定

ピープルツリーのパートナー20団体は規模も形態もさまざま。いくつもの小グループに分かれ、数千人の生産者を抱えるところから数十人の小規模団体まで、また福祉や教育のプロジェクトも行うNGOから企業として活動する団体まで多様であるため、各団体にいくらずつ支援金を配分するかは難しい判断でした。大規模なNGOは活動規模も必要な資金額も大きいものの、取引先も多く欧米の取引先から支援を受けているケースもありました。一方、小規模でピープルツリーを唯一の取引先とする団体は他からの支援を見込めないなど、活動規模だけでなく様々な要素を配慮して、できるだけ公正な判断を心掛けました。

結論として、原則としてすべての団体に一律$1,000(約10万7千円)を配分し、特に配慮が必要と思われる団体に$500~$1,000を上乗せすることとしました。
折しも、クラウドファンディング実施中の5月20日、インド東部とバングラデシュを過去10年で最大級というサイクロンが襲い、暴風や強雨による土砂崩れなどで住宅や農作物に大きな被害をもたらしました。インドの西ベンガル州で80人以上、バングラデシュで20人以上が亡くなり、家や作物、土地に被害を受けた人は1300万人にものぼりました。

幸いにもパートナー団体の中で人的被害はありませんでしたが、西ベンガル州に生産者グループがいるサシャから、10の生産者グループで作業所や事務所の建物に被害があったとの報告を受けました。

サイクロン被害や活動内容等から、サシャをはじめとするパートナー4団体と、支援対象者が多いNGWFに$500~$1,000を上乗せすることとし、下記の通り支援金を配分しました。

[参考] 1バングラデシュタカ=約1.2円 1フィリピンペソ=約2.1円

3)送金の実施

当初は、インド、バングラデシュ、ネパールの3カ国については各国のフェアトレードネットワークを通じての送金を計画していましたが、ネットワーク組織に加盟していない団体もあり、またネットワーク内で特定の団体のみに寄付を配分することが困難であることから、21団体に個別で送金することにしました。6月19日~30日の間にドルまたはユーロでの送金を終了したものの、いくつかの団体ではビジネス用の口座への寄付の入金が銀行により引き出しを拒否されるなど、7月7日現在、現地で引き出し可能となったことを確認できたのはまだ10団体にとどまっています。

引き出しのために必要な書類の手配など、引き続きフォローを行っていきます。

4) 活動の広報

(1)SNS、ウェブサイトからの発信

パートナー団体からヒアリングした内容を、「生産者のいま」というレポートにして4月27日~5月20日にピープルツリーのフェイスブックとインスタグラム、ブログ、グローバル・ヴィレッジのフェイスブックとブログ、READYFORプロジェクトページの「新着情報」で紹介し、現地の様子とパートナー団体からのメッセージを伝えました。

また、クラウドファンディングの目標達成状況も、フェイスブック等で頻繁に発信しました。

ピープルツリーのフェイスブックページ(左)とREADYFORの新着情報(右)

 

(2)フェアトレードの学校オンライン開催

通常はピープルツリー自由が丘店で月1回開催している「フェアトレードの学校」を、5月はオンラインで2回開催。5月24日の回にインドからサシャCEOでWFTO(世界フェアトレード連盟)の理事長であるルーパ・メタさん、タラ・プロジェクト代表のムーン・シャルマさんをゲストに迎え、インドのロックダウン下の人びとの暮らしや生産者の状況について語ってもらいました。

エシカル協会代表理事の末吉里花さんも交え、97名の参加者に、コロナ禍の中でできる一人ひとりのアクションを考えていただきました。

ルーパ・メタさん(左)はコルカタの自宅から、ムーン・シャルマさん(右)はデリーの自宅兼オフィスから参加しました。
イベントの4日前にコルカタを州都とする西ベンガル州がサイクロンに襲われ、前日までルーパさんとの通信が途絶えていましたが、当日奇跡的に回復し、リアルタイムでお話を聞くことができました。

 

4.資金使途報告

・パートナー団体20団体とNGWFへの送金$24,500 = 2,636,701円
・クラウドファンディング経費(READYFOR手数料、クレジットカード入金手数料): 374,247円
・送金手数料: 72,760円

合計: 3,090,708円
収支: ▲5,908円

※不足分はグローバル・ヴィレッジの資金で補填した
※支援のリターン商品の代金と送料は、ピープルツリー(フェアトレードカンパニー株式会社)が負担した

 

5.パートナー団体からのメッセージ

いずれの生産国でもコロナウイルスの感染は拡大を続けており収束が見えません。一方で現地では、経済活動を優先するためにロックダウンが緩和され、生産現場は少しずつ動き出しています。

パートナー団体は、活動の再開と感染防止の両立という難しい舵取りを迫られており、楽観できない状況が続いていますが、困難の中でもできる限りの対策をとりながら前に進もうとしています。

<ネパール>

サナ・ハスタカラ
代表 チャンドラ・カッチパティさんより (2020/6/18)

80日以上事業を休止していましたが、今週からスタッフと生産者の25%が、マスクの着用や消毒、ソーシャルディスタンスなどの対策を取りながら業務を再開しました。スタッフや生産者の感染に備えた保険も取り入れました。

この困難な時期に、$1,000の支援金はほんとうに助かります。

 

<バングラデシュ>

デュー・クラフト
代表 シャー・アブダス・サラームさんより (2020/6/20)

ピープルツリーは、もっとも長期間、密な関係を築いている信頼のおけるパートナーのひとつであり、常に私たちに思いを寄せ、認めてくれます。

商品を購入いただいたりクラウドファンディングに協力してくださったピープルツリーのお客様に感謝しています。私たちの生産者グループが持続可能な暮らしを送れるよう、力をつける手助けとなります。
タナパラ・スワローズ
代表 ライハン・アリさんより (2020/6/1)

今回の支援金の使い道として、私たちは工房で働く生産者に作業服を提供することにしました。
自分たちの工房で縫製し、115人の生産者にひとり2着ずつ提供します。

<フィリピン>

サフィー
代表 ロウィナ・アリンドガン・アントニオさんより (2020/6/2)

5月15日、31日と政府はロックダウンを段階的に緩和し、事業者は通常の稼働を認められました。しかし、感染者の増加し続ける状況は変わっていません。みな第二波を警戒していますが、政府は経済を優先させているようです。

サフィーでは、徒歩で通勤できるスタッフにのみ出勤を許可し、残りはテレワークで仕事を続けています。まもなく製品を出荷できると希望を持っています。支払いを受けられることが何よりも必要です。できるだけ早く準備できるよう、ベストを尽くします。

仕事を再開するにあたっては、ソーシャルディスタンスを守ることやマスクの着用、体温測定といったガイドラインを設けて守るようにしていますので、心配いりません。

支援金を送っていただけることは、私たちや職人たちにとって大きな助けになります。本当にありがとうございます。

<インド>

サシャ
ディレクター スジャータ・ゴスワニさんより (2020/6/24)

クラウドファンディングを行って私たちに支援金を送ってくださるということに、心から感謝いたします。
コロナウイルスの感染拡大と、さらにサイクロンの被害で苦境にある生産者にとって、とてもタイムリーな支援となります。
支援金の使い道については、情報をアップデートして報告いたします。


CEO ルーパ・メタさんより (2020/6/29)

パートナーからこのような支援を得られることは、財政的な意味にとどまらず信義的にも、私たちのチームのモチベーションを高めこの困難に立ち向かうためにベストを尽くそうという決意を後押ししてくれます。
タラ・プロジェクト
代表 ムーン・シャルマさんより (2020/6/24)

ピープルツリーとグローバル・ヴィレッジが、生産者を支援するプロジェクトを始めてくださり感謝しています。クラウドファンディングに多くのお客様や支援者が協力してくださったと聞き嬉しく思います。

タラ・プロジェクトに$1,500の支援金を送ってくださるという決定に、深く感謝いたします。このご支援は私たちにとってとても大きな意味を持ちます。大変な状況にある生産者やその家族を支えることができるでしょう。これからタラ・プロジェクトが実施するさまざまな活動について、定期的に報告いたします。

ご存じの通りインドでは、状況は以前よりも厳しくなっています。ロックダウンが緩和され、人びとは生きていくために仕事に戻るしか選択の余地はありません。しかし同時に、貧しい人びとの多くが仕事を失ったままです。デリー(タラ・プロジェクトの活動拠点)やその他の大都市では日ごとに感染が広がっています。残念ながらコロナウイルスは今やデリーのような大都市で街中あちこちに広がっています。私たちがいる地域は感染拡大地域とされており、これまでに45万6千人の感染者と1万4千人の死者が出ています。検査件数は増えていますが人口が膨大なためとても十分と言えません。マスクの着用やソーシャルディスタンスを保つというルールを守らない人も多くいます。さらに、雨期に入って気温と湿度が上がり、マスクを着用するのも難しくなってきています。

タラ・プロジェクトの教育プロジェクトと生産者グループ2団体が活動しているバダルプールで、悲しいことに二人の犠牲者が出ました。一人は以前コミュニティーワーカーとして働いていたマンジュ、もう一人は教育プロジェクトで支援を受けていた少女ナンディニです。マンジュは心臓と甲状腺の疾患を持っていました。呼吸困難に陥って病院に運ばれ、多くの困難を経てようやく酸素吸入を受けられましたが、助かりませんでした。ほとんどの病院はコロナウイルスの感染患者であふれかえり、必要な治療を必要な時に受けられなくなっているのです。

酸素供給機器の不足と病院の定員オーバーの状況を見て、タラ・プロジェクトでは緊急時に酸素吸入ができるようバダルプールのヘルスセンターに医療機器を配備することにし、酸素濃度計、酸素ボンベ、酸素集結装置の3種類を手配しました。これで緊急時の患者の手当や、喘息などの呼吸器系の疾患を持つ人の助けになればと思います。

タラ・プロジェクトの支援活動
(上)ヘルスセンターに納品された酸素キット
(中、下)食糧配給のようす

 

6.まとめ

目標を大きく上回るご支援をいただき、当初想定していた1団体あたり5万円~20万円という支援金額を、21団体すべてに10万円以上とすることができました。

ほとんどのパートナー団体が、生産者やスタッフへの休業手当や食糧配給などの活動に数千~数万ドルの費用を必要としています。そのため支援はまだまだ十分とは言えませんが、パートナー団体からは支援に対する謝意にとどまらず、生産者に寄り添う気持ちに対する感謝や、まだ先が見えない中でも活動を継続する後押しになったとのコメントが寄せられ、フェアトレード生産者を励まし支えるという目的は達成できたと考えています。

今後も引き続き、現地の様子をフォローし可能な支援方法を探っていきます。

以上

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グローバル・ヴィレッジについて

グローバル・ヴィレッジは、イベントやキャンペーンを通じて貿易や消費社会の問題点を伝え、途上国の立場の弱い人々の自立を支援 するフェアトレードの普及・促進を行うと共に、生産国の教育・環境プロジェクトの支援を通じて生産者をサポートしています。

こういった活動を安定して継続的に行うため、会員となって活動を支えてくださる方を募集しています。詳しくは、こちら