アパレル生産現場で起きている現実と解決への鍵

アパレル生産現場で起きている現実と解決への鍵


ピープル・ツリー 広報ディレクターのタネモリです。

去る4月18日(土)、東京・代々木公園で行われたアースデイのイベントで、「着るものどうやって選んでますか?」というタイトルのトークステージに出演しました。
このトークは、貿易、農業、医療、労働などさまざまな分野で「誰もが幸せになれる経済」を目指すために企画された2日間のステージイベントの一環で行われたもの。国際人権NGO ヒューマンライツ・ナウ(HRN)の伊藤和子さんがファストファッションの生産現場で起きている問題を、私がピープル・ツリーのフェアトレードの取り組みについて語り、消費者がどんなアクションを起こすべきかという問題提起をしました。

伊藤さんはまず、2013年4月に起きたバングラデシュの「ラナ・プラザ」事故(縫製工場が入居するビルが倒壊し1,000名以上が亡くなった)を例に、先進国で売られている衣料品がつくられるアジア各国の縫製工場で、低価格競争のもとで工場の労働者が犠牲になっている現状を指摘しました。

HRNは2014年7月~11月、香港の人権NGO Students & Scholars Against Corporate Misbehaviour (SACOM)と協力して日本の大手ファストファッション・ブランドが生産を委託していた中国の縫製工場に潜入調査を実施しました。そこで聞いたのは、エアコンがなく室温が38℃にもなる工場で「あまりの暑さに夏には失神するものもいる」「まるで地獄だ」と言う労働者の声。生地の染色作業場では、100℃以上になる染料タンクに事故防止のゲートもなく、作業員は防護服も身に着けずにタンクから600kgもの重量の生地を取り出す作業を行っていました。工場内の床には排水があふれて感電の危険があり、危険な化学物質の管理もずさんなものでした。しかし労働組合はなく、労働者たちは工場主に改善を求めることもできずにいたのです。

染料タンクの上で作業する労働者 (写真提供:ヒューマンライツ・ナウ)

染料タンクの上で作業する労働者
(写真提供:ヒューマンライツ・ナウ)


排水があふれる工場内 (写真提供:ヒューマンライツ・ナウ)

排水があふれる工場内
(写真提供:ヒューマンライツ・ナウ)


HRNとSACOMは2015年1月、この潜入調査の結果を発表して工場に生産を委託していたブランドに対し、他の工場の調査と改善を行うよう求めました。このブランドは事実を認めて改善を約束しましたが、伊藤さんは「大手企業は工場の安全基準など事故防止の対策には熱心だが、その動機は自分たちが事故の責任を問われないようにという自己防衛であり、労働者の人権という視点が抜けている」と指摘します。現場で働く人びとが安全な環境で働き、公正な賃金を受け取り、問題があれば改善を求めて対等な立場で雇用主と交渉するといった、労働者として当たり前の権利が、いまだにないがしろにされているのが現状です。

2015年1月、HRNとSACOMによる調査報告の合同記者会見。右が伊藤和子さん (写真提供:ヒューマンライツ・ナウ)

2015年1月、HRNとSACOMによる調査報告の合同記者会見。右が伊藤和子さん
(写真提供:ヒューマンライツ・ナウ)


私は、一般のファッションとフェアトレード・ファッションの違いとして、フェアトレードでは人権と環境を最優先とし、手仕事による付加価値や環境を守る生産方法を大切にしていること、価格の決定はオープンな話し合いで行われ、デザインや品質の向上に向けて支援しながら共に発展を目指していることなどを説明しました。

伊藤さんも私も、バングラデシュや中国のアパレルの生産現場で起こっているさまざまな問題を解決する大きな鍵は、消費者である私たち一人ひとりが握っているという共通の意見を持っています。
消費者が安い製品を求めれば求めるほど、ブランドやメーカーは少しでも生産コストを削ろうと生産工場にプレッシャーをかけ、その結果、過酷な労働や安全基準の軽視となって現場の労働者がしわ寄せを受けることになるのです。「こういった状況を許していたら、いつか自分も不当な扱いを受けることになるかもしれない」と、伊藤さんは消費者が当事者意識を持つことの大切さを訴えました。

服を買うとき、その服がどこの誰によってどんなところでつくられたのかに興味を持つこと、つくる人の権利や環境をないがしろにするような製品は欲しくないとブランドやメーカーに意見を伝えること、フェアトレードを始めとするエシカル・ブランドを積極的に選ぶこと・・・一人ひとりが実践することが大きな力になるのだということを、これからも伝えていかなければと改めて感じました。


ピープル・ツリー 広報ディレクター タネモリ


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ピープル・ツリー/グローバル・ヴィレッジでは、衣料品産業の裏側を取材したドキュメンタリー映画『THE TRUE COST』の上映会を、明日6月11日(木)に企画しています。
アメリカのアンドリュー・モーガン監督がラナ・プラザの事故をきっかけに、現在の経済システムの特徴でもある「大量生産・大量消費」の犠牲になった世界中の人々を取材したものです。
詳しくは、こちらをご覧ください。