デザイナーのオーラ・カイリーにインタビューしました

デザイナーのオーラ・カイリーにインタビューしました


サフィア・ミニー(以下、サフィア):今回のコラボレーションのグラフィックや形は何をきっかけに思いつきましたか?

オーラ・カイリー(以下、オーラ):今回はプリントが2柄あります。ひとつめは鳥のプリント。これはおもしろいことに、ヒッチコック監督の映画「鳥」から思いつきました。と言っても、もちろん映画よりずっと楽しく表現したいと思っていました。実際のグラフィックは、ソール・バスやポール・ランドなど50、60年代のグラフィックデザイナーからひらめきを得ました。少し民芸っぽい北欧ビンテージのような雰囲気があります。こういう雰囲気が私たちにはしっくりきます。

サフィア:一番刺激になったデザイナーやアーティスト、クリエイターは誰ですか?

オーラ:ミッド・センチュリーのデザイナーたちを今も振り返ります。私にとって一番刺激になった時代です。まさに境界線をぶち壊していた時代だと思います。ルシアン・デイやバーバラ・ブラウンといったテキスタイル・デザイナーやデンマーク人の家具デザイナー、プロダクト・デザイナーは、いつも私に刺激を与えてくれます。フィン・ユールやアルネ・ヤコブセン、チャールズ・イームズといった人たちです。彼らは誰にとっても刺激になりますが、問題はそこから何を引き出すかです。

サフィア:2つめの柄、ロータスフラワーについて教えてください。本当に美しいプリントですね!

オーラ:ロータスフラワーは私たちが数年前に手がけたグラフィックで、シーズンを重ねるごとに進化しています。修正、変更をする度に、満足しています。すっかり確立したオーラ・カイリーのフラワー・プリントのひとつです。シンプルでクリーンな柄なので、クールさが際立ちます。かわいすぎず、とてもグラフィカルです。赤色がピンクの下地とのバランスを保つことで、甘すぎない印象を与えています。過度な女性らしさでなく、色やクールでシンプルなグラフィックが好きな女性に好まれる柄だと思います。

サフィア:靴のデザインもされていて、クロッグをつくられたり、トレンドをしっかり見据えていますね。今回のコラボドレスにはどんな靴が合うと思いますか?

オーラ:今回のドレスはどれも、ドレスアップもドレスダウンも簡単にできます。シンプルな夏らしいブローグ(パンチングを開けて装飾した靴)からエスパドリーユ、ビーチサンダルまで、どれでも合います。どんなスタイルでも自分好みにできるでしょう。

サフィア:経済や社会にもっと女性らしいパワーがあれば、もっと持続可能なもの、もっと私たちや私たちの多様性を反映したものになっていたかもしれません。

オーラ:この2、30年、女性はビジネス、産業、政治で大きな歩みを見せました。そこには論理があります。また思いやりもあります。私たちが関心を持つこと、それがとても興味深い世界につながるのです。

サフィア:社会や政治など、世界を平等主義に導くのに今必要なのは女らしい力だと論じる人がいます。

オーラ:私に一番刺激を与えた50~70年代は、真の変革の時代でした。50年代、女性は家事をする主婦という伝統的な役割の中で考えられてきましたが、彼女たちは自らの力や独立心を見い出し始めました。60年代には物事が本当に変わり始めました。女性は明らかにより大きな力、より大きな自由や平等を追い求めました。そして現在、産業や政治の分野では、女性の数が大きく増えています( もちろん、もっと増やせるとわかっています)。女性の特性から私たちは共感力が高く、同情心も厚く、気にかけることができます。このようなことは常に世界で大切なことです。

サフィア:あなたの成功の鍵は何だと思いますか?

オーラ:成功? 自分の本能に導かれ、信じることを実践して、何年も一所懸命に働いてきたからだと思います。

サフィア:何年もの間、多くのコラボを手がけてこられました。これから何かデザインしたいと思うものはありますか?

オーラ:ごくシンプルなハンドバッグをとても気に入った様子で肩にかけている人を見かけると最高の気分になります。つまるところそういうことなんです。私たちがやっていることで喜んでくれる人がいるのを目にしたり耳にしたりできるのが何よりの喜びです。

サフィア:コレクションごとに、どれくらいの数のプリントを手がけられますか?

オーラ:実際はそれほど多くありません。メインでは、おそらく5プリントくらいでしょう。新しいプリント同士、すべてが互いにうまく合っていなければいけません。多くはありませんが、それぞれが素晴らしいものになるように気をつけています。今もそのプロセスは地道に継続しています。

サフィア:このコラボも100%フェアトレードのオーガニックコットンでつくり、GOTS認証を受けています。なぜそれが大切だと思いますか?

オーラ:ピープル・ツリーのコットンがオーガニックでフェアトレードであるということは、私にとって魅力です。その誠実さやアイディア、遂行する力には目を見張るものがあります。あらゆることが地球にとってよりよい助けとなっていて、それが極めて重要なのです。これからは、大昔そうであったように、わざわざオーガニックだとうたわなくてもよくなったら、どんなに素敵でしょう。

オーラ・カイリー  Orla Kiely
ロンドン王立芸術大学の芸術修士課程を修了した後、ハロッ
ズのために帽子をデザインしたことからキャリアをスター
ト。おしゃれであるとともに機能性も重視した衣料品やバッ
グ、インテリアグッズなどを展開。アイルランド出身で現
在はロンドンを拠点に活躍中。
www.orlakiely.com