現役大学生、欧州から日本のフェアトレードを考えるvol.3
オランダのスーパーマーケットでこれまでの記事の内容を検証してみた。

現役大学生、欧州から日本のフェアトレードを考えるvol.3<br>オランダのスーパーマーケットでこれまでの記事の内容を検証してみた。


オランダ留学中の桑原です。
皆さま、いかがお過ごしでしょうか。遅くなってしまいましたが、今年もよろしくお願いいたします!

新年の花火

新年の花火

オランダでは新年を花火でお祝いします。
ニューイヤーズイブの午後6時から元日の深夜2時までの間、個人での花火が公式に許可されているため、この時間に驚くほどの花火が打ち上げられ、見渡す限りいっぱいの花火を見ることができます。オランダの首都であるアムステルダムでは大規模な花火大会のようなものが開催されていたようですが、私の学生寮はそこから100km離れた田舎にあるので、行くことはできませんでした。それでも学生寮の周りでも十分たくさんの花火が打ち上げられました。

さて、今回もオランダのフェアトレード事情についてご紹介いたしますが、その前に皆さまにご報告することがあります。実は私が留学しているサクシオン大学で履修している持続可能な国際ビジネスコースは5か月の短期プログラムで、1月いっぱいで授業が終了してしまいます。

これからはイギリスのフェアトレードファウンデーションにて、とりあえず3か月間のインターンシップ活動をさせてもらえることになりました。2月下旬にイギリスでフェトレードフォートナイトという二週間に渡る大きなイベントが開催されるのでその際のメディア活動をサポートすることになりそうです。

イギリス

イギリス

フェアトレードファウンデーション

フェアトレードファンデーション2

フェアトレードファウンデーション2

社会活動に関するメディアコミュニケーションを体験をすることで、帰国後に日本のNGOや社会活動家のPR活動に貢献できるのではないかと考えています。

 

今回を含めオランダからの配信は残すところ2回となりますが、今回は実際に地元の スーパーマーケットを紹介しながら、これまでの記事の内容と照らし合わせながらオランダのフェアトレード事情を検証してみたいと思います。

まず前回までの記事を簡単に振り返ってみましょう。
第一回:あえてフェアトレード製品を購入する人は少ない。
第二回:スーパーマーケットのような大衆をターゲットにした小売業では、フェアトレードは企業の信頼度を高めるツールと認識されているため特に宣伝はしない。
第三回:NGOの企業への働きかけが普及への鍵。

という感じで紹介してきたかと思います。まだ読んでいない記事がありましたら、先にそれらをぜひご一読ください!
それでは見ていきましょう。

 

まず、こちらは学生寮から一番近いスーパーマーケットの「PLUS」です。ここでは日本のスーパーマーケットのように店員さんが常に品出しやレジ回しをしており、日本と同じレベルでサービスが受けられます。個人的にはしばしばここで買い物をしているのですが、価格帯は比較的高めに設置してあるようで、少し離れた別の店で買い物をするという学生も少なくありません。

PLUS外観

PLUS外観

PLUS 店内の様子

PLUS 店内の様子

 

あえてフェアトレード製品を購入する人は少ない。
それならば何故、オランダを含むヨーロッパの先進国ではフェアトレードの売上が高いのでしょうか。

Picture1

それは小売店でのフェアトレード製品の露出度が高いことが理由にあります。言い換えると、消費者がフェアトレードを「偶然」手にする確率が高いということです。

写真からもご覧いただけると思いますが、日本と比較してかなりの種類のフェアトレード製品が店頭に並べられています。

フェアトレードバナナ

フェアトレードバナナ

フェアトレードお茶

フェアトレードお茶

フェアトレード米

フェアトレード米

フェアトレードコーヒー

フェアトレードコーヒー

フェアトレードコーヒー

フェアトレードコーヒー2

フェアトレードワイン

フェアトレードワイン

フェアトレードお花

フェアトレードお花

フェアトレードナッツ

フェアトレードナッツ

BEN&JERRY's

BEN&JERRY’s

フェアトレード製品を専門にするFair Trade Originalというブランドにインタビューしたことがあるのですが、その際も「製品の売上自体が伸びたのではなく、製品バラエティが全体の売上を引っ張っているんだよ」と言っていました。
スーパーマーケットのような大衆をターゲットにした小売業では、フェアトレードは企業の信頼度を高めるツールと認識されているため特に宣伝はしない。
写真をご覧いただくと、並べられている製品のほとんどが、小売店のプライベートブランドであることに気がつかれたでしょうか? 写真のみで紹介できる内容に限りがあることが残念ですが、メーカーでつくられたフェアトレード製品よりも、自社ブランドで製造されたフェアトレード製品の方が多く陳列されているように感じます。

かといって特別それらを宣伝しているわけでもなく、他の製品と同じように並べられています。つまりマーケティング活動のために利用しているのではなく、「フェアトレードに取り組んでいる」という事実をつくり出し、信頼を得ることを目的にしていることが読み取れます。企業の社会的責任を考えた時に、小売店として製品の安全性や安心性を高めることは大切ですからね。この意味でも自社ブランドで製造している理由が見えてきますね。 (信頼度を高める理由は第二回の記事で紹介しました)


NGOの企業への働きかけが普及への鍵。

しかし、小売企業の信頼度向上のためだけならフェアトレードでなくても構わないのではないか。他の認証ラベルを使用すればいいのではないか。そんな疑問が湧いてきます。実はフェアトレード活動に独自に参加することは、小売企業にとってもいくつか利点があります。

まず認証団体であるマックスハベラー自体がフェアトレードラベルのプロモーション活動に力を入れていること。オランダにはフェアトレードタウンが64か所も存在し、日本のように学生活動やコミュニティでのワークショップも行われています。これにより、フェアトレードを認知した人の購入意欲が煽られフェアトレード製品の売上向上に貢献します。

さらに日本と違う点として、年2回行われるフェアトレードウィークにはマックスハベラーから以下のようなカタログが各家庭のポストに投函され、どこの店舗でフェアトレード製品が買えるかが宣伝されています。このカタログにはフェアトレードの紹介と、取り扱い小売店の紹介が同時にされています。このように第三者NGO団体からの製品プロモーションのおかげで消費者はもちろん投資家やコミュニティに高いレベルで信頼度を提供できることになります。

マックスハベラーのカタログ

マックスハベラーのカタログ

カタログ中面

カタログ中面

確認のため、「ALDI」というスーパーマーケットも訪れたのですが、あいにく 撮影許可がおりず店内の写真が入手できませんでした、すみません。

一応紹介しておくと、ここは価格帯も低く設定してあるスーパーマーケットで、学生はPLUSよりもここで買い物することが多いようです。しかし店員の数が少なく、品出ししている姿を滅多に見ません。商品バラエティも雑多で探している商品が見つからないこともしばしばです。さらにレジも2か所しかないため、PLUSに比べるとサービス面ではかなり劣ります。このお店のフェアトレード事情はどうでしょうか。

一応いくつか商品を見つけることができました。写真で紹介しますね。

ALDIのフェアトレード製品

ALDIのフェアトレード製品

カタログ内容ALDI

カタログ内容ALDI

やはりこちらのフェアトレード製品も自社ブランドで製造されており、特別なプロモーションはされていないようです。また、他メーカーで製造されたフェアトレード製品は見られませんでした。ALDIもフェアトレードカタログで紹介されており、信頼度獲得のツールとしているようです。

 

来月はオランダからの最後の報告になりますので、サクシオン大学のグループプロジェクト「フェアトレードを5年以内に普及させる最適な方法の確立」を簡潔に紹介していきたいと思います。
今回もお読みいただきありがとうございました。次回の記事もご期待ください!

桑原


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