【生産者支援プロジェクト続報】
パートナー団体の近況と送金状況のご報告

【生産者支援プロジェクト続報】<br> パートナー団体の近況と送金状況のご報告


コロナ禍で商品の生産の中止や延期を余儀なくされ、苦境に陥っていたピープルツリーのパートナー団体を応援するため、6月末に日本のみなさまからお寄せいただいた支援金を21団体に合計約264万円送金して2カ月あまりが経ちました。生産者パートナーからは、受け取った支援金の使途報告や現地の近況が届き始めています。

支援金を生産者に現金で分配した団体、食糧や医薬品を配布した団体など、日々の暮らしを下支えする地道な活動の様子を伝えてくれています。また、インドとフィリピンから、国内の詳しい状況が届きました。

一方で、未だに送金した支援金を受け取ることができていない団体もあります。理由は、商用口座宛に寄付目的の入金は受けられないと銀行から拒否されたり、寄付受入れのためにスタッフの個人口座を入金先にしたところ送金人も個人に変更するよう銀行に指示されたりしたためです。寄付の証明のために送ったレターの記載内容が不十分と指摘されたり、中継銀行の取引条件が変更されていたりなどで7団体に対して送金のやり直しが発生し、うち3団体は無事受取りが完了したものの、残り4団体はまだパートナー団体や現地の銀行との確認作業中です。

送金から現地銀行での着金確認までに10日間、その引き出しのために銀行から申請書の提出を求められさらに1週間かかったケースもあり、現地事情の複雑さにため息がでることもありました。なんとか全団体に支援金を届けるまで、フォローを続けてまいります。

さて、パートナー団体から届いた報告をご紹介します。

7月中旬に16名の生産者に4,500ルピー(6,300円)ずつ現金を配ったと報告をくれたのは、インドのメルヴィル・トラスト。

 

インドのゴダバリ・デルタレースでは、米25kgとビタミン剤を配布しました。

 

バングラデシュのデヴテック・アソシエイツからは、はた織り職人たちに食糧品を配ったとの報告が。

 

いつも丁寧な報告をくれるインドのタラ・プロジェクトは、8月12日に現地の様子を伝えてくれました。

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7月はじめに1,500ドルの支援金を受け取りました。タラ・プロジェクトが生産者や地域の立場の弱い人びとのために行っているコミュニティ支援活動を続ける上で大きな助けとなります。本当にありがとうございました。

フェアトレード商品の受注が減ってしまい、生産者たちは定期的な仕事がなくなっています。生産者とその家族の暮らしを守るために、食糧品や衛生用品の配布、前払いの実施はとても大切です。これによって生産者たちはなんとか生き延びているのです。何カ月かのうちには、仕事の方も状況が改善することを願っています。

食糧品を配布するタラ・プロジェクト代表のムーンさん(写真左内の左の女性)

マスク、石鹸、消毒液などの配布

インドでは現在も、新型コロナウイルスの感染が未だに多くの人びとの暮らしを破壊し続けています。人口が多くソーシャルディスタンスも守られていないので市中感染をコントロールすることは困難です。仕事をなくした出稼ぎ労働者が数週間前に都市から地方に帰郷したため、農村部にもウイルスが広がっています。仕事がなければ彼らは故郷に戻るしかなく、その中に感染者がいてもチェックする体制が十分でないため、ウッタルプラデシュ州やビハール州では毎週ロックダウンが厳しくなっています。

インド国内のあちこちで感染が広がっています。感染者数は226万人、これまでに亡くなった人は45,300人にもなります。症状の軽い人の多くは回復しているというのが救いです。(タラ・プロジェクトの拠点である)デリーでは、先月に比べて状況はわずかに好転し、感染者と死者の数が減少しました。しかしここ2週間のあいだにヒンドゥー教とイスラム教のお祭りが行われ、ソーシャルディスタンスが徹底されずにまた感染が増えてしまいました。

経済は不安定で、失業者の数も膨大です。企業も厳しい運営を迫られており、政府からの支援はほとんどありません。生きてゆくには仕事をしなければなりません。デリーではロックダウンのレベルが「ステージ3」に緩和され、仕事のための外出は許されています。店の多くは営業を再開し、買い物に外出することもできます。しかし教育機関や地下鉄、州をまたぐ交通機関は休止したままで、航空会社や宿泊業者は営業ができず大きな赤字に陥っています。

フェアトレードの生産者グループの一部は仕事を再開していますが、タラ・プロジェクトのオフィスでは長距離通勤のスタッフは自宅待機を続け、週に1~2日は感染防止のためオフィスを閉めています。

デリー市内では現在、自宅療養中の感染者がいて外部からの出入りを禁じられた「レッドゾーン」が293カ所まで減りました。数週間のうちにもっと減るとよいのですが。自宅療養ではお湯や解熱剤などを使って自分で治すしかありません。病院の治療費は一般の人にとって高額なため、よほど重症にならない限り病院に行きません。周囲の目を気にして感染したことを隠す人も多いです。

タラ・プロジェクトでは、生産者や保健プロジェクトを行っている地域の住民に、食糧品や衛生用品の配布を続けています。この活動を続けられるのも、ピープルツリーをはじめとするフェアトレードのパートナーたちのおかげです。みなさまの支援と連帯に感謝いたします。

私たちは、感染予防のための啓発活動も始めました。ポスターを作り、講習会を開いています。これからもさまざまな活動を予定していますので、またご報告します。

感染予防講習会のようす(左)とポスター

タラ・プロジェクト
代表 ムーン・シャルマ
プロジェクトマネージャー ヴィカス・クマール

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タラ・プロジェクトを初めとするパートナー団体が、真剣に生産者に寄り添いながらこの困難を乗り越えようとしていることに胸を打たれます。

しかし、ほとんどの国で感染の収束は未だに見えていません。フィリピンのサフィーからは、厳しい現状を伝えるメールが8月18日に届きました。

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この2週間、再び厳しい外出規制が実施されていましたが、昨晩、翌日からの規制緩和が発表され、通勤や公共交通機関の利用が許可されました。政府には予算がなく国民をロックダウン下に置いておけないのです。感染は再び広がり、病院が患者であふれ医師たちが抗議の声を上げるまで続くでしょう。医療崩壊がロックダウン実施の最大の理由でした。

私たちはまるでチャチャ(ダンス)を踊っているように感じています。前に後ろにとステップを踏みながらどこにも進んでいない。一人ひとりがウイルスに感染しないよう細心の注意を払うしかありません。

サフィーのオフィスでは、厳しい状況のもとスタッフの給与を支払えず、勤務日を週3~4日に減らしています。経済の悪化はドミノ倒しのように波及している今、事業を続けることが唯一の望みです。

この状況が早く収束し、パンデミックに立ち向かえるようになることを心から願います。

私たちは、私たちの仕事をしっかり続けていくことを約束します。前に進む方法を探し続けます。事業を続けていくためには、クリエイティブにならなければなりません。

ピープルツリーがずっと私たちを支援してくれていることに感謝します。商品の発注をいただけることが大きな意味を持ちます。

サフィー
代表 ロウィナ・アリンドガン・アントニオ

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「商品の発注をいただけることが大きな意味を持つ」という言葉に、本来であれば支援金を送るのではなく、商品をつくってもらいその仕事に見合った代価を渡すという対等な取引関係でお金を送りたいとあらためて思います。

ピープルツリーでは今週から、秋冬の新商品の販売を始めることができました。通常でも、企画から実際に形になるまでに多くの手間と時間のかかるフェアトレードのものづくり。ロックダウンによる生産や輸送の遅れなどたくさんの問題もありながら、なんとか日本に到着した手仕事の品々を目にして、出来上がるまでの生産現場での苦労を思うと、いつも以上に感慨もひとしおです。

つくり手と買い手という当たり前の関係に戻れる日を願いながら、これからも生産者パートナーと共にフェアトレードの活動を決して止めないよう、一緒に歩んでまいります。

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