フェアトレードのおしごと ~その3 輸入・物流チーム編~

フェアトレードのおしごと ~その3 輸入・物流チーム編~


3回目を迎えた、連載「フェアトレードのおしごと」。
今日は「輸入・物流チーム」のご紹介です。

前回までのデザインチーム仕入れ・生産管理チームの話で
各国でどのようにフェアトレードの商品がつくられていくのかを紹介しました。

今日は、それらの商品をいよいよ日本へ出荷!というところからのお話です。

世界12ヵ国から届く商品を日本で受け取ります

輸入・物流チームの仕事内容は、その名の通り、商品を輸入して、国内の配送を指示・管理すること。
バングラデシュ、インド、ネパールなど世界12ヵ国から届けられる商品たちを
日本で受け取ります。

 

環境負荷の低い船便で、はるばる日本に届けられます

環境負荷の低い船便で、はるばる日本に届けられます

 

税関での手続きを済ませ、無事日本に輸入した商品を今度は千葉にある倉庫に移動させます。
そして倉庫の担当者に指示を出しながら、お客さまの元へ発送の手配をします。

このように、日本での輸入手続き、倉庫の管理、そしてお客さまへ発送の
一連の流れを担当しているのが「輸入・物流チーム」です。

「自社通関」はとても珍しいこと

フェアトレードとはいえ、輸入は輸入。
フェアトレードならではの違いはあるのかな?と思っていたのですが
ほかの企業と大きな違いがありました。

それは「自社で通関をしていること!」です。
……ん?と思った方。ご安心ください。

それって珍しいことなんですか? そもそも通関ってなんですか??
恥ずかしながら同じ会社にいながら何も知らず、「輸入・物流チーム」にいろいろと聞いてみました。

通関とは、商品を輸入する際に、商品の内容や個数を税関に申請して、
輸入にかかる税金を申告する手続きです。

「これまで専門業者の立場や、彼らに依頼する窓口として通関業務に携わる人に
たくさん会っているけれど、自社で通関をしているという人には会ったことないですね。
私も入社したときは驚きました!」(ハラノ)

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通関は、通常、専門業者に依頼するもので、
輸入者が自ら通関するということは、本当に稀なこと。
ではなぜピープル・ツリーは自社で通関をしているのでしょうか。

 

複雑な手続きの末、たどりついた答えは生産者と直接コミュニケーション

通関には輸入する商品の内容や個数を税関に申請し、税率を決定するための書類が必要で
この書類は、取り扱っている800品目それぞれに必要です。
特に税率は、素材や用途によって異なるため、全商品ひとつひとつ調べます。

たとえばオーガニックコットンのワンピースは「織物 > 女性用 > ワンピース > 綿製」
のカテゴリーに属します。
商品が属するカテゴリーがわかったら、その税率を調べ書類を作成します。
この作業を商品の数だけ行います。

 

通関に必要な書類と関税を調べるための分厚い本(今はweb上でも確認可能)

通関に必要な書類と関税を調べるための分厚い本(今はweb上でも確認可能)

 

このカテゴリーを判断する作業で苦労する商品もあります。
たとえばフェアトレード・ジャム
ケニアの小規模農家の生産者が、環境に配慮して、丁寧につくっています。
たっぷりの果肉と食べやすい自然な甘さが魅力のこのジャム。
素材の味を引き出すために、通常のジャムより果肉が大きく、粘度が少ないため
一般的な認識は「ジャム」でも、関税の面ではジャムという定義からはみ出してしまう可能性があり
判断するのがとても大変で、審査員と何度も相談しながら進めたそうです。

そしてその書類の中には、輸出者である生産者が用意しなければならないものもあります。
そこで、どんなに注意を促しても起きてしまうのが記載ミス。
数字の間違いのほかに、手書きの書類をメールで送ってくる生産者も。(書類は原則手書きNGです)

そのたびに、電話やメールで生産者へ確認や修正の依頼が発生します。
今でこそ、生産者団体のオフィスでインターネットや電話などを利用できるようになりましたが
数年前までは、生産者が近くのホテルまで行き、FAXでやりとりをするということも。
この書類の確認・修正にはとても時間がかかります。

さらに時差もあり、納期ギリギリにできあがる商品も多く、予定通りに進むことはありません。
それでもなんとかして時間を短縮しお客さまにスケジュール通りにお届けしたい!と考たその答えが
「自社通関」でした。

外部の方に依頼するのではなく、普段からやりとりのある自分たちで
直接生産者とコミュニケーションをとり、
記載ミスがあったら、指摘をして再び起きないように丁寧に指導する。
デザインチームや仕入れ・生産管理チームと同様、生産者に寄り添い、
彼らの商品を届けたいという思いから
自分たちで通関をやろうということになりました。

生産者とのやりとりは大変。でもそれがやりがい。

「ストライキや停電、あとは生産者が急に休暇をとったり(笑)と、
予定通りにいかないことが多いです。でも、長年やっているとそれにも慣れて
それを見越してスケジュールを立てられるようになりました」

文化の違う生産者とのコミュニケーションは一筋縄ではいきません。
出荷のスケジュールも書類の手配も、遅れてしまうことがしばしば。
それを解決するには、やはりお互いが歩み寄ること。

たとえば毎年洪水の多い地域は、起こりやすい時期には余裕をもってスケジュールを立てます。
相手の国の祝日もしっかりチェック。
(同じ国でも、地域によって祝日が異なることもあり、とても複雑なのです)

あとはやはり生産者との具体的で密なコミュニケーション。
たとえば、書類やスケジュールの確認だけでなく、荷物の積み方のアドバイスをすることも。
輸出に慣れていない生産者は、商品を梱包する際に詰め込みすぎてしまいがちなのですが
そうすると日本に届くころには、下の荷物が重みでつぶれてしまう恐れがあります。
事前に生産者と連絡をとり、梱包の指導をしてB品の発生を未然に防ぎます。

自社で通関をしているからこそ、細かい指示や指導ができ
お互いに歩み寄り、生産者と二人三脚で12ヵ国から届くたくさんの商品たちを管理することができるのです。

「それでも遅れてしまった出荷を、国内での手続きや流通がスムーズに運ぶようなんとか調整して
無事に予定通りお客さまの元へ届けられたときは、本当にうれしいです。」

いつも忙しそうに、国や社内の部署をまたいで調整をしている輸入・物流チーム。
専門的なおしごとなので、知識はもちろんのこと
それと同じくらい、生産者とのコミュニケーションを大事にしていることが
とても印象的でした。

さて! 次回は、通販チーム。
はるばる日本に届いた商品を、お客さまに販売するチームです。
お楽しみに!

(ピープル・ツリー 通販担当 タケマツ)