フェアトレードのおしごと ~その1 デザインチーム編~

フェアトレードのおしごと ~その1 デザインチーム編~


毎年5月の第2土曜日は、世界フェアトレード・デー。
そして、5月はフェアトレード月間。
フェアトレードの良さや大切さを、広くアピールするためのキャンペーン月間です。

フェアトレードは、「人と地球にやさしい貿易の仕組み」と説明していますが、
具体的にはどういうことをしているの?と思われる方も多いのでは。
そこで、ピープル・ツリーで働くスタッフのおしごと紹介を通じて、
フェアトレードの取り組みや意義を、5回に分けてお届けします。

まずは、商品がどのように企画されるのか、デザインチームに話を聞きました。

大まかに業務を紹介すると
コレクションのテーマ決め
素材探し
デザイン決め、パターン起こし
サンプル発注
サンプルチェック、修正
展示会
最終修正
本発注
量産前確認
という流れになっています。
業務の流れ自体は通常の会社とあまり大差がないと思われますが、各段階の進め方に、
フェアトレードならではの大きな違いがあります。

企画スタートは2年前から

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フェアトレードでは、つくり手が無理なく生産できる時間を確保するため、
企画のスタートが通常より半年から1年ほど早めです。
手織り生地の生産や手編み、ブロックプリントや刺繍といった手仕事で作業を進めるには、
それなりの時間が必要なのです。

「今(2015年4月現在)は、2016年の春物のサンプルが上がり始めたタイミングで、
来週から2016年の秋冬のテーマ決めがスタートします。今年の秋冬物は量産体制に入っていて、
カタログでは今年の夏増刊号の校正を見終わったばかり……と、いつも4シーズン、2年分を抱えていて、
今がいつなのか分からなくなっちゃうこともありますね(笑)」

 

イメージマップを作って、ビジュアルを共有し合いながらテーマやテーマカラーを詰めていきます

イメージマップを作って、ビジュアルを共有し合いながらテーマやテーマカラーを詰めていきます

 

また、デザイン最優先ではなく、各生産者団体の得意なことや、
その国の伝統的な技法・素材を活かせる仕様にすることも重要です。
そのため、洋服も雑貨も、スタッフが現地に出張して、生産者さんたちと何ができるのかを
話し合いながら、素材探しから企画が始まるのです。

フェアトレードならではのデザイン・素材の決め方

「生産者さんのほうから、こんな素材をつくれるようになった!と提案をもらうこともよくあります。
日本の消費者の好みを考慮する必要があるので、なかなかそのまま採用することはできないのですが、
自分たちの仕事に誇りを持って積極的なのがうれしいですね」(サケミ)

「手織りと刺繍ができる団体に、刺繍がないアイテムを発注してしまうと、
刺繍の職人さんの収入につながらない。
得意な技術をまんべんなく使えるように、また新しいことにもトライしながら
アイテムの割合を考えて、デザインしていきます」(サケミ)

「ブロックプリントは、生産者団体さんがストックしている伝統柄などを組み合わせて
新しいデザインにしたり、ピープル・ツリーのために新たに木版を彫ってもらうこともあります。
素材の開発に時間がかかる一方で、オリジナルにプリントを作っているからこそ、
洋服の柄を雑貨でも使えることができるのはいいですね」(サラ)

 

ブロックプリントの木版

ブロックプリントの木版

 

素材は見た目だけで選ばず、つくり手やお客さまへの安全性や、環境負荷への配慮が不可欠。
サステナブルに事業を進めるうえで大事な要素です。

「フェアトレードの10の指針を守るため、素材は輸入に頼らず現地で調達できるものの中から選び、
天然素材などできる限り地球への環境負荷を下げる方針で企画をしています。
出張の際に、環境負荷や労働環境を配慮するため、生産者団体の工房の排水浄化設備や食堂、
トイレの衛生面をチェックするのも、フェアトレードならではですよね」(サラ)

素材の特性やつくり手の技術力を考慮したデザインが決まったら、パタンナーがパターンを作成、
サンプルを発注します。本生産までに、社内や展示会で取引先やお客さまの意見も考慮し、修正を重ねます。

「現地に行って生産者さんと直接仕事ができることが、前職とはまったく違うしごとの進め方ですね。
サンプルチェックをして、現地ですぐに修正できることが強みです。
出張中はずっと生産現場につきっきりで、技術指導をしています。
生産者団体やつくり手によって技術力に差もあるので、
スキルアップのためのワークショップなども行っています」(トーク)

 

現地でのパターンチェック

現地でのパターンチェック

やりがい

最後に、フェアトレードのしごとについて一言ずつコメントをもらいました。

「生産者さんの顔が見えるのがいいですね。お野菜に農家さんの写真がついているように、
ひとつひとつの商品に、つくった方々の顔が思い浮かびます」(サラ)

「前職では、買い叩いたり、納期について厳しくいうのは当然のことで、そんな自分が嫌だった。
今もコスト削減は大切なことだけれど、お互いが話し合いながら進められるので気持ちよく仕事ができます」(サケミ)

「ファッションというと上辺を着飾るための表面的な仕事なんじゃないかと思っていましたが、
“デザインすることで社会貢献できる”ということに驚きと喜びを実感しています」(ナオミ)

「ひたすらトレンドを追うアパレルだと、つくっては次、つくっては次と、機械的に進んでしまって、
自分じゃなくてもできるなぁという思いがぬぐえなくて。今は、人対人のやりとりで、
時間をかけてつくっている感覚がきちんとあるのがうれしい」(カネコ)

「企画してから実際に商品としてできあがるまでに、現地に行ったり、何度もやり取りすることで、
つくり手や生産背景が見えるのがいいですね。長く付き合っていると、つくり手の技術向上が見えます。
最近は生産者さんから逆に提案をもらえたり、モチベーションが上がっているのが
伝わってくるのでうれしいです」(トーク)

書面での一方的な指示ではなく、人対人のやりとりを重ねながらものづくりを進めていくのは、
大変なことでもあり、フェアトレードならではのやりがいでもあります。
取材中、ずっと笑顔の絶えないデザインチームスタッフ。
つくり手と直接つながっているからこそのリアルな手ごたえと、
そこから生まれるエネルギーを感じられる笑顔でした。

 

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次回は、企画が実際に「もの」として仕上げ、日本に届けられる状態にするまでを主に扱う、
「生産管理」のインタビューです。お楽しみに!

(ピープル・ツリー PR担当 ヒロミ)