バングラデシュ訪問記
~現地の今 Vol.2 女性を応援する研修プロジェクト~

バングラデシュ訪問記 <br>~現地の今 Vol.2 女性を応援する研修プロジェクト~


2022年~2023年の年末年始にバングラデシュを訪れたグローバル・ヴィレッジ代表 胤森から、3つのプロジェクトそれぞれの今を、3回シリーズでお届けしています。

その2回目は、2021年3月にクラウドファンディングで資金を募り、ご協力いただいたみなさまともに支援している、女性のエンパワメント研修の進捗についてご報告します。

昨年末12月31日(土)、プロジェクトの進行管理や手続きを担うフェアトレード団体であるNGO「デュー(DEW)」のオフィスに、プロジェクトチームのメンバーが集まりました。
DEWの生産部門「デュー・クラフト」は、ピープルツリーの竹ザルやホグラ草のバスケットでおなじみの、長年にわたる生産者パートナーでもあります。

コロナ禍を経て、初めてプロジェクトメンバーと顔を合わせてのミーティングとなったこの日、プロジェクトを統括する、バングラデシュのフェアトレード団体のネットワーク「ECOTA」の理事長スワパン・クマール・ダスさん、DEW代表のシャー・アブダス・サラームさん、プロジェクト・コーディネーターを務めるDEWのゴラム・モストファさん、そして研修の実務を担う開発NGO「クリスチャン・エイド」のアンジュム・チョウドリーさんなど8名が集まりました。

DEWのオフィスに着くと、ブーケで訪問を歓迎してくれました。筆者(左)の右隣は、プロジェクト・コーディネーターのゴラム・モストファさん

 

進捗状況については節目毎にオンラインミーティングで説明を受けたり、議事録や写真を受け取ったりしていたものの、メンバーの何人かは初対面。顔を合わせて会話することで、プロジェクトに対する熱意や希望を直に感じることができました。

まず、プロジェクト・コーディネーターとして研修のアレンジや報告書の作成を担っていたゴラム・モストファさんから、これまでの実施内容についてあらためて説明を受けました。

・2月~5月 基礎調査
プロジェクトチームが、参加する6団体それぞれを訪れて基礎調査を行いました。
女性の権利について、組織として確立されたポリシーを持っているか、現場で働いている人たちはどの程度それを理解しているかなどをヒアリングしました。

タナパラ・スワローズでの基礎調査の様子。プロジェクトチームのサラームさん(立っている男性)、スワパンさん(その右隣)、モストファさん(右端)らが生産工房で働く女性達にプロジェクトの概要を説明(2022年5月)

 

・6月 研修プランの策定
研修のノウハウを持つ「クリスチャン・エイド」が通常使用している教材は、企業や工場などを想定したもの。村の小さな作業所や自宅で作業する人がほとんどの職人グループには当てはまらないことも多くありました。基礎調査の結果を受けて実態に合う内容に調整しました。

プロジェクトに参加する6つのフェアトレード団体の代表とプロジェクトチームのミーティング(2022年6月)

 

・7月31日~8月2日 マネジメント研修
6団体から各2~3名のマネジメントレベルのスタッフが参加して3日間の研修が行われました。実施にあたって、研修コンサルタントのバサンティ・サハさんが委託を受けて研修を主導しました。

マネジメントスタッフの研修の参加者たち(上)と、研修コンサルタントのバサンティ・サハさん(下)(2022年8月)

 

・10月 教育係育成プログラムの作成
マネジメント研修の実施を受けて、各団体4名の「教育係」を育成するための研修プログラムとテキストが作成されました。DEWのアドバイザーである文化人類学者のアイヌーン・ナヘール教授がプロジェクトチームに加わり、内容や用語などについて細かいチェックが行われました。

プログラムについて検討するプロジェクトメンバー。左端の女性がアイヌーン・ナヘール教授

 

10月27日~31日 教育係研修
6団体24名の「教育係」候補のスタッフが、5日間に渡って研修を受けました。テキストを使った座学だけでなく、ロールプレイやブレインストーミングなど、参加型で参加者同士が切磋琢磨する研修となりました。

研修に参加した24名には、最終日に修了証が手渡された

 

これからの予定
・1月~3月 教育係による各職場での研修
10月の研修の最終日に、参加者24人はそれぞれ自分たちが行う職場研修のスケジュールプランを立てました。3月までにすべての団体が職場研修を実施予定です。

・5月 振り返りとテキスト英訳版作成

 

コーディネーターのモストファさんは、このプロジェクトでの役割を終えて別の仕事が決まっており、この日が最終日でした。
コーディネーターを務めた8か月間について、こんな風に語ってくれました。
「基礎調査のために6つのフェアトレード組織の生産現場を訪れたことは、とても楽しい経験でした。みなこの研修に対して前向きで積極的でした。このプロジェクトは、フェアトレード業界にとってとても重要な役割を果たすと思います」

プロジェクトを主導したECOTAの理事長・スワパンさんは、この研修の意義についてこう語りました。
「フェアトレードの生産現場のようなインフォーマル・セクターでこのような研修が行われるのは、バングラデシュで初めてのことです。この研修を通じて(ジェンダーについて)何が問題なのかを知り、家庭内でも男女が助け合えるような気付きを得ることができます。
このプロジェクトから得た研修の教材やテクニックは、バングラデシュの他のインフォーマル・セクターや他の国々のフェアトレード組織でも活かせると期待しています。

この研修を財政面で支え、励ましてくれたクリスチャン・エイドとピープルツリーに感謝しています」

スワパンさんは、年明けに印刷する予定のテキストの校正原稿を見せてくれました。10月の研修の実績を踏まえ、教育係が各職場で行う研修に使用するためにより分かりやすく解説や修正を加えています。

1月に印刷予定のテキストの校正原稿

 

このベンガル語のテキストは、ECOTAに加盟する他のバングラデシュのフェアトレード団体にも利用してもらう予定です。また、5月には英訳版を作成してWFTO(世界フェアトレード連盟)に加盟する他の国のフェアレード団体にも共有できるようにします。

スワパンさんに、前日私が訪問したバングラデシュ衣料産業労働者連盟(NGWF) とも連携してはどうかと提案しました。フェアトレードの恩恵を受けていない縫製工場などで働く女性たちが、自分たちの権利を知り性差別のない職場を実現する力をつけるためにも、この研修で得た成果を共有してもらいたいからです。

今回の訪問で、ECOTAとNGWFがつながる可能性が生まれたことは大きな意味があったと思い、今後の展開に期待しています。

この研修プロジェクトが、すべての働く女性たちがより安心して働ける環境をつくるための大きな一歩となるよう願っています。

 

バングラデシュ訪問記~現地の今
Vol.1 20年以上継続する衣料産業労働者の活動支援
Vol.2 女性を応援する研修プロジェクト ←今回はこちら
Vol.3 村の学校支援プロジェクト  Coming Soon!

 

【研修プロジェクトのこれまでの進捗報告はこちら】

クラウドファンディング開始(クラウドファンディングREADYFORのプロジェクトページ 2021年3月~)

中間報告「コロナ感染の再拡大と「認定NGO」の壁」(2021年7月)

2022年2月から始動決定!(2021年12月)

プロジェクトが動き出しました!(2022年3月)

いよいよ8月から研修スタート!(2022年6月)