『ザ・トゥルー・コスト』自主上映会のススメ

『ザ・トゥルー・コスト』自主上映会のススメ


『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション 真の代償』は、2013年4月24日にバングラデシュの首都ダッカ郊外にある縫製工場「ラナ・プラザ」の崩壊事故をきっかけに取材・制作されたドキュメンタリー映画です。

おしゃれで安いファッションの裏側にある、深刻な人権侵害や環境破壊について、衝撃的な事実が映し出されています。2015年11月の公開以来、映画館で半年にわたるロングラン上映となり、全国各地では今も自主上映会が企画されています。

すでにDVDも発売されているので個人で見ることもできますが、自主上映会では参加者同士で意見交換をしたり、感想を共有したりできるのが、大きなポイント。

ショッキングな事実に、見た直後はどうしても気持ちは沈んでしまいがちですが、沈んだままにするのではなく、「このままではいけない!」「知ったからには、どうしたらよいのだろう?」と、問題解決の糸口をみんなで一緒に探っていくことができます。

今もなお自主上映会が盛んに行われている背景には、映画を見ただけでは終わらせられない、もっと多くの人に知ってほしいなど、何かしら行動を起こさせる力が映画の内容にあるからだと思います。

先日、神奈川県鎌倉市で自主上映会を開催したヨガスタジオSUGATAの大谷友花さんと栗飯原彩子さんのお二人に、企画から実際に開催しての感想を聞いてみました。


20160711_01b



1. そもそも何故この上映会をしようと思ったのしょう?

■ ヨガインストラクター 大谷さん

毎年5月に「みらい祭り」という、“持続可能な鎌倉”をテーマにヨガ、ピラティスなどボディワークのチャリティーイベントを行っており、その関連で今年は上映会をしようかという話になりました。

その時に、知人がフェイスブック上で『ザ・トゥルー・コスト』に関するピープルツリーのブログをシェアしていたのを思い出したんです。
ファッション業界の裏側で、廉価な衣服のために、開発途上の国の人々を搾取し、世界が不安定になっている様がよく描かれてると。

恐らく、それまでもピープルツリーの店頭やホームページでも目にしてたのでしょうが、少し意外なところから情報がきて、とても印象に残っていて、これは見なければと。

実は、「これを上映しよう」とほぼ決まってから、慌てて観に行きました。こうした世界の状況を恥ずかしながら知らなかったので、衝撃を受けましたし、上映会をするモチベーション、エネルギーが湧いてきました。


■ SUGATAスタッフ 栗飯原さん

映画については、大谷さんに教えていただきました。私自身、大学時代にカンボジア&ベトナムのスタディツアーに参加した経験があったのですが、社会人になってからはこういった世界の問題を考え、触れることから久しく離れておりました。

今回、ご縁あってこの映画を拝見したことで、学生時代の想いが蘇り、「私にもできることを。一人でも多くの方にこの映画を伝えることをやりたい!」という熱い気持ちがこみ上げ、上映会開催のモチベーションに繋がりました。


2. 実際に上映会を企画して大変だったことや印象に残っていることは?

■ 大谷さん

私は普段ヨガのインストラクターをしているので、こういった上映会が初めてにも関わらず、200人以上入る会場をおさえたので、やはり集客が大変でした。

また、ボランティアのスタッフの方々や周囲のみんなが、予想以上に期待以上に、協力的でした。人と一緒に何かをやることの楽しさと、大変さを感じました。


■ 栗飯原さん

告知と集客をしていく中で、扱っている題材が「重い、怖い」印象のため敬遠される方もいらっしゃいました。

私自身、目を伏せてたくなるようなショッキングな映像を見るのはとても苦手な性格なので、その気持ちもよく分かりました。
そういった方々、そして普段こういった社会問題に馴染みのない方々に、どう関心を持っていただき、お伝えすれば良いのか、とても難しかったです。

チラシをお店に置き、またSNSを駆使して告知も行いましたが、一番確実にお伝えできたのは、街頭でのチラシ配りだったことが印象に残っています。

SNSでは届かない世代の方々がたくさんいらっしゃることを実感しましたし、やはり自分の口で説明することが相手に一番響くように感じました。
応援してくださる方もたくさんいらして、応援の言葉にとても励まされました。


20160711_02


【お客さまからのご感想の一部】
◆多くの事を考えるきっかけになる映画とトークショーでした。来て良かったです、ありがとうございます。
何となく知識として持っていた「フェアトレード」への意識が大きく変わりました。
現状の悲惨さの原因は企業だけでなく、そこにより高い物質主義をかかげる私たち消費者にもあると考える機会となりました。

◆“ものを買う”という行為がこんなに影響を与えているとは思わなかった。外注するのは、単に為替の差で労働コストが安いだけと考えていた。
こんなに劣悪な環境、条件で働かされているとは……。これから買う際に、どこでどういう人がつくったのか、考えていくようにしたい。

◆とっても素敵なトークショーでした。ファストファッションの裏にこんなひどい状況があったとは知りませんでした。いろいろと考えさせられました。
ファストファッションだけでなく、ハイブランドの裏もどうなっているのか知りたくなりました。
いちばん大切なのは、働いている人たちの生活環境をもっと良くすること。強く思うとともに、自分に何ができるのか……

◆すごく良かった。ありがとうございます。low cost で profit を求める。理解しながらも、やっぱりおかしいと思っていました。
すぐには変えられないけれど、「知る」ことの大切さを感じています。私から友人、知人に伝えていくようにしたいです。

◆食品については神経を使ってきましたが、衣類にももっと関心をもっていきたいと思いました。


3. 上映会をやり終えてのご感想は?

■ 大谷さん

上映会後は、協力してくれた方や見に来てくれた方々が、本当にありがたく、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
そして観客の方から、何かしら意識が変わった、という熱いフィードバックをいただき、やって良かったんだな、と思えました。

上映会をするということに限らないですが、自分がコミットした分だけ、さまざまな感情や経験、学びというリターンが得られると思いました。
本当にプロセスに全て意味があると。告知の過程で、この映画を題材にさまざまな方と話をしたり、また相手がこういう上映会にどういう反応をするかも、知らない側面を見ることができたり。 時折、なぜ私がこの上映会をしようとしているのか、ここまで一生懸命宣伝しているのか不思議になることもありましたが、これも何かの縁で、起こるべくして起きていて、 自分を含め、多くの人の成長に関わっているような気がしました。とてもとても有意義な経験になりました。

世界を知ること、世界の問題を深く理解しようとする姿勢は、自分を知ることに他ならないと思います。
バングラデシュやインドで起きている話は、遠い世界の話ではなく、私たちに大いに関わる話であると。
そして、逆もしかりで、自分を知ることは、世界を知ることであると……。

と言いつつ私自身、偉そうなことを言える立場では全然なく、むしろ差し出して差し出して、それでやっとバランスが取れるくらいな……。
まだまだ未熟で選択や判断、見えてない事が大いにあり、人と何かをすることの楽しさや難しさ、一見いいことを掲げているからこそ、誠実に気をつけなければならないこと、本当に気付きをありがとうございました。


■ 栗飯原さん

お客さまからいただいたご感想に、何よりも報われました。皆さまの文字を通して、私達の想いがしっかりと伝わったことを実感でき、とても嬉しかったです。
この上映会を企画・開催するにあたり、SUGATA内部にとどまらず、外部のさまざまな方に出会い、お力をいただき、本当に感謝しております。
良かった点・反省点、振り返りをし、また来年の企画につなげていきたいです。


人権問題、貧困問題、そして環境問題。映画でも取材されていた多くの問題を解決する方法の1つとして、「フェアトレード」があります。
ピープルツリーはフェアトレード専門のブランドとして、各地の自主上映会に、上映後の分かち合いのゲストスピーカーとして招かれました。

「現状を変えていこう!」と皆さんが集まる場に、ぜひ、ピープルツリーも混ぜてください。
消費者として、市民として、企業として、NGOとして……それぞれの立場から知恵を出し合い、どの人にとっても心地よい暮らしができる世界をどう実現してくのか、できることを一緒に探っていきましょう。


★ SUGATAのブログ 
→ http://www.sugata.co.jp/report/ka_report/9219

★ 映画館での上映情報 
→ http://unitedpeople.jp/truecost/scr

★ 市民上映会のスケジュール
→ https://www.cinemo.info/movie_detail.html?ck=38

★ 市民上映会を開催したい方へ 
https://www.cinemo.info/jisyu.html?ck=38

★ お近くで上映会のない方へ。
ピープルツリーのサイトからもDVDを購入いただけます。(税込3,780円)
→ http://www.peopletree.co.jp/pgchg/shopping/book/095796/

(ピープルツリー 広報 鈴木啓美)