グローバル・ヴィレッジ30年HISTORY
~Vol.5「フェアトレード保証制度」のはじまり~

グローバル・ヴィレッジ30年HISTORY<br>~Vol.5「フェアトレード保証制度」のはじまり~


2013年5月。ブラジル、リオデジャネイロで開かれたWFTO(世界フェアトレード連盟)の総会の議場は、喜びと興奮に満ちていました。世界中からフェアトレード団体の代表者が集まったこの隔年総会で、新しい「フェアトレード保証制度」が決議されたのです。

フェアトレード保証制度を決議したリオデジャネイロのWFTO総会の様子(2013年5月)

 

フェアトレード保証制度とは、WFTOに加盟する輸入団体や生産者団体が、フェアトレードの理念を持ちそれを実践していることを評価し保証するシステムです。生産者とのフェアな取引や事業の透明性、環境への配慮などを定めたフェアトレードの10の指針が守られ実行されていることを認められた団体はフェアトレード保証を受け、商品にフェアトレード保証ラベルをつけて販売することができます。

 

この制度の必要性を訴えていたのは、主に生産者団体でした。

WFTOと並ぶフェアトレードの世界的な組織、国際フェアトレードラベル機構(Fairtrade International:略称FI)は、主にコーヒーやカカオ豆などの産品について国際フェアトレード基準を設け、認証された製品に認証ラベルをつけて販売することを推進しています。1980年代後半にフェアトレード・コーヒーをスーパーマーケットで販売してもらうことをきっかけに考案された認証ラベルの制度は、フェアトレード製品を一般の流通に乗せフェアトレードの裾野を広げることに貢献してきました。

FIの国際フェアトレード認証制度によって認証された製品につけられるラベル

 

一方、主に手工芸品の生産者団体と輸入団体によるフェアトレード事業者ネットワークとして1987年に発足したIFAT(現WFTO)では、加盟団体がフェアトレードの10の指針を守って活動していることを評価する制度を2004年に確立しましたが、あくまでも団体の活動の透明性を確保することが目的であり、製品にラベルを表示することは想定されていませんでした。いくつもの職人グループが加工過程に関わる手工芸品や衣料品では、すべての作業現場でフェアトレードの指針が守られていると審査し証明することは簡単ではなかったのです。

 

しかし、生産者団体の間では、自分たちの製品の販路を広げるためには、製品に認証ラベルをつけてフェアトレードのものと分かるようにしたいという声が大きくなっていきました。WFTOは2011年に作業部会を立ち上げ、FIの認証制度の専門家とも連携して制度づくりを始めました。10の指針に沿って、たとえば職人グループの賃金の記録や組織体制の透明性などをチェックし評価する方法や指標、第三者による監査などのルールをつくっていきました。

フェアトレード保証を受けた団体の製品につけられるラベル(左)と、WFTOの加盟団体であることをあらわすマーク(右)

 

同年、イギリスのピープルツリー・グループのNGO部門であるピープルツリー・ファウンデーションは、生産者パートナーの能力向上プロジェクトを開始し、生産者団体のスタッフや職人がフェアトレードの指針を理解し組織内の課題の発見や解決に取り組めるよう、支援しました。

バングラデシュとネパールの生産者パートナーと共に行った能力向上プロジェクト(2011年)

 

ピープルツリーは、このプロジェクトで得た知識や経験を、新しいフェアトレード保証制度に活かすことをWFTOに提案し、承認されました。プロジェクトに参加した5つの生産者パートナー団体が、フェアトレード保証制度の試験運用に参加し、制度が実用的で運用可能なものかを確認していきました。

 

2013年9月、日本とイギリスのピープルツリーは、WFTOのフェアトレード保証を受けた最初の団体のひとつとなり、翌年の春夏コレクションの商品のタグに、「GUARANTEED FAIR TRADE」というラベルをつけて販売を開始しました。

ピープルツリーの衣料品につけられているフェアトレード保証ラベルのタグ

 

このタグは、商品づくりに関わったすべての団体が、フェアトレードの指針を掲げそれを実行していることを証明しているのです。

 

◆グローバル・ヴィレッジ30年HISTORY

Vol.1  グローバル・ヴィレッジ誕生ストーリー

Vol.2 フェアトレードチョコ誕生

Vol.3 世界フェアトレード・デーの始まり

Vol.4 デザイナー・コラボレーションの始まり

Vol.5 「フェアトレード保証制度」の始まり(今回)

Vol.6 ファッションレボリューションを起こそう!

 

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